2024年度事業計画
2024年度 学校法人芝浦工業大学 事業計画
はじめに
建学の精神『社会に学び、社会に貢献する技術者の育成』
教育の理念『世界に学び、世界に貢献するグローバル理工系人材の育成』
~日本?アジアを代表する私立理工系大学の雄をめざす~
1. 改革路線の継続
本法人のガバナンス改革は、私立学校法に基づき、理事会を最終的な権限と責任を担う最高意思決定機関であることを明確化し、理事長が本法人の代表となり、その業務を総理することを規定しています。 また設置学校の中心である芝浦工業大学の学長はリーダーシップの確立を目的に学長候補者選考委員会が学長候補者を選考し、理事会において決定しています。理事及び評議員の選任についてもその職責を全うできる候補者を選考委員会で選考し、理事会において決定しています。2023年度中には2025年4月施行の私立学校法改正を受け、理事長、学長、理事などの役員や各学校執行責任者の任期を3年から4年に改め、より長期的な視野に立って施策方針から実施、更に改善までを含めた戦略を策定することが可能になります。選出される理事長、理事会と学長の連帯感のある体制により、大学改革を迅速かつ適切に展開する環境が整っているため、2024年度も引き続き教職学協働でスピーディな改革を実現してまいります。この私立学校法改正は「執行と監視?監督の役割の明確化?分離」を基本とし、理事?理事会、監事及び評議員?評議員会の権限分配を整理し、「建設的な協働と相互けん制」を確立することが目的です。3年後に控えた創立100周年に向け、本法人の更なるガバナンス改革を実現してまいります。更には本学教職員のエンゲージメント向上につながるよう、人事評価?給与制度改革の推進、DX化による業務削減改革など働き方改革を更に進めてまいります。
2. 100周年記念事業
2027年に100周年を迎える芝浦工業大学にて実施する100周年事業を見据えた法人と大学の教職学協動による各種企画立案、運営準備を実施することを目的に設置した芝浦工業大学創立100周年準備委員会では、「100周年WEBサイト」を通じて100周年に向けた各種イベント企画を卒業生?保護者?学生等、広く社会に発信していきます。100周年事業として設置された「有元史郎MEMORIAL CORNER」では在学生と卒業生、地域住民を繋ぐ役目を果たし、芝浦工業大学の過去から現在、そして未来を共有いたします。芝浦工業大学熱海セミナーハウスでは学生生徒、教職員、卒業生の健康増進はもとより集える場を提供することにより一体感を高めます。寄付金戦略は2021年度より開始した返礼品寄付制度は多くの方に利用いただいており、卒業生企業や関わりのある企業の協力を得て引き続き新たな返礼品商品の拡充を図ってまいります。また2023年度より開始した豊洲キャンパス交流棟大講義室の座席芳名プレート寄付をはじめ、多くの方に寄付をしていただけるような100周年に向けた仕組みを作ってまいります。3. 盤石な財政基盤の確立
学校法人が持続的かつ健全性をもって発展するためには盤石な財政基盤の維持?向上を図ることが必要です。芝浦工業大学大宮キャンパス整備や柏中学高等学校校舎の施設整備計画、システム理工学部、デザイン工学部の定員増や大学院進学率の強化を前提とした中長期財務シミュレーションの策定を行い、財政状況を可視化します。2024年度も経常収支差額比率と事業活動収支差額比率(旧帰属収支差額比率)の10%以上の達成と積立率100%を目指した財政運営を行い、戦略事業に対する積極的な支援と将来の投資に備えた内部留保の充実の両立に努めます。2024年度も目標とする財務指標を目指し、計画的な財政運営に取り組みます。
4. 教育研究改革
芝浦工業大学は『社会に学び、社会に貢献する技術者の育成』を建学の精神として設立され、有為な人材を社会に送り出すことで高い評価を得てきました。その社会は今、グローバル化に加えてデジタル化の波にのまれ、大きな変貌を遂げつつあります。これに伴い世界の産業構造も大きく変化していますが、日本の大学における教育プログラムは、昭和の時代から引き継がれた学問体系から脱却できていません。
芝浦工業大学は、建学の精神に則り、社会のニーズに応える人材を輩出すべく教育改革に取り組んでおり、その成果は文部科学省支援事業の1つである「私立大学等改革総合支援事業」に11年連続での4タイプ採択にあらわれています。少子化に伴う大学進学者の減少は我が国の成長を阻む一因となりますが、日本は戦後も少数精鋭で飛躍的な発展を遂げており、芝浦工業大学で行われている教育研究が我が国の発展に寄与していることを鑑み、これからも大学改革を継続し、大学教育の質の向上と保証を確立してまいります。大学改革の試みとして工学部では2024年4月から学科制を廃止し複数の専門分野を融合し、イノベーションを生み出す課程制の導入がスタートします。デザイン工学部では情報?ロボティクス系を発展させて、ICTやデータサイエンスなど情報技術をベースに社会課題に取り組むソーシャルデザイン系(仮称)への転換を進めます。更にシステム理工学部では社会で要請される情報系を中心に、理工系全分野をカバーすべく、生命科学、スポーツ健康科学、医工学系、建築?環境系の分野を拡充した課程?コースを設置し、学生定員を増員する計画を具体化します。これにより2023年5月1日現在、7,806人である学生数を、一般的に大規模大学と言われている1万人に増員することを目指します。
2020年年初から始まったコロナ禍は、遠隔(オンライン)授業という強力な教育手段を手にすることができました。芝浦工業大学においては、キャンパスをもつ大学の意義をよく考えつつ、教育におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し、アフターコロナにおける新しい教育スタイルを提案するとともに、それを実践します。
2014年9月に文部科学省より「スーパーグローバル大学創成支援」(SGU)に選定されて以来、グローバル化を推進してきた結果、学生の英語力や留学経験者数など大きな伸びを見せています。しかし、技術者として国際社会に活躍するためには、その能力以外に幅広い専門知識や柔軟な思考力が求められます。これらの能力は大学院での研究活動などで更に培われます。芝浦工業大学の大学院進学率は増加傾向にあり、目標進学率60%に向けた国際社会での活動を意識付けすることを通じて、大学院への進学を推奨するとともに、長期留学を支援します。
大学の卒業研究および大学院における修士課程の研究を通じて学生は実践的スキルを身につけます。研究は教育の手段と言われるほどに大学にとって重要なミッションです。「世界に貢献するグローバル理工系人材育成」という社会的使命を果たすため、人材育成に関しても、本学の強みである国際連携の枠組みを最大限に活用し、企業人?日本人学生が留学生と共に研究する場を意識的?組織的に提供します。学生は「知の活用」を実践する場で先端研究を通してグローバルに活躍する人材に成長していきます。研究を推進するための機器?設備の整備はもちろん、論文執筆?投稿支援や研究資金獲得支援に加えて事務補佐等の支援を充実させます。
5. グローバル?DE&I推進
6. 産学官連携の推進
芝浦工業大学では、建学の精神『社会に学び、社会に貢献する技術者の育成』に基づき、共同研究、受託研究、技術指導、及び技術移転など、社会実装に向けた産業界との連携に積極的に対応しています。特に、中小企業に対しても技術指導から始め、共同研究へ展開する等、積極的な共同研究の取り組みを進めており、首都圏の大学の中にあって産学共同研究における中小企業比率が比較的高いことが特徴で、「寄り添い型の共同研究」を展開しています。本学の産学官民連携活動は教員の対外連携活動に加え、研究コーディネーターの配置によって産業界からのニーズをきめ細かく把握する体制となっています。昨年度導入した共同研究講座の設置や戦略的産学連携経費の仕組みを通じて、ユニバーシティ?リサーチ?アドミニストレータ(URA)が教員と共同研究先の連携に積極的にコミットし、組織的な共同研究への取り組みと研究の大型化を推進して参ります。また、研究の成果である知財の権利化を進めるとともに、社会実装、新規事業創出に貢献するための知財の活用を促進して参ります。ベイエリア?オープンイノベーションセンター(BOiCE)は、2023年度、東京圏における世界を変える大学スタートアップを育てるプラットフォーム、Greater Tokyo Innovation Ecosystem(GTIE)(主幹3機関:東京大学、東京工業大学、早稲田大学)の共同機関に昇格しました。GTIE 事業への参画により、各種起業支援プログラムの提供が可能となった他、2024年度からはGAPファンドによる支援も開始する予定です。また、中小機構のインキュベーションマネージャーをBOiCEに配するなど、専門家支援も拡充し、大学発スタートアップ創出のための起業支援体制を強化してまいります。
また芝浦ビジネスモデルコンペティション(SBMC)は2024年度で9年目を迎えますが、2023年度からは中高生を対象としたJunior版も実施し、多くの参加を得ました。双方の取り組みを行うことで、BOiCE には大学生、中高生の新たな交流も生まれています。今後も様々な人や企業との交流を通じて、産学共創の発展拡大を目指すとともに、起業に関心を持つ学生をISS(イノベーション?スチューデント?スタッフ)として雇用し学生の参画も積極的に促し、学生のアントレプレナーシップの醸成にも寄与して参ります。
7. 戦略的広報活動
創立100周年(2027年)に向け、大学の長期ビジョン『Centennial SIT Action』の認知度を更に拡大するために、各施策における活動や成果を広報し、芝浦工業大学のブランド力の確固たる定着を進めてまいります。高校生向けに、XやYou Tubeチャンネル、Tik Tokやインスタグラムなどのコンテンツを活用した広報に力を入れます。また女子学生の多い工科系大学、有名企業400社実就職率ランキングなど受験生にインパクトのある情報を提供します。工学部課程制の狙いを伝えるプロモーションやシステム理工学部改組の内容など、芝浦工業大学の目指す教育?研究、組織改革に関する情報をスピーディかつ正確に社会に届けるためのデジタルメディア化も進めます。このほかにSDGs推進活動の発信、女子学生拡充のためのPR、研究成果の積極的な発信、駅伝プロジェクトをはじめとする学生活動広報にも注力してまいります。8. DX化の推進
芝浦工業大学におけるDX化の推進として、「日本の理工学教育を先導する」「教育と教学マネジメントを支える教育環境」「ICTシステムを整備する」を目標とし、CBTや動画を活用したコンテンツを授業で利用可能な環境整備と新しい教育を試行可能なICTシステムを整備します。また、教職員のITリテラシーの向上とDX推進人材の育成のために、情報セキュリティ基本規程の実質化や生成AIの活用に向けてのFDSD研修などを実施します。学内事務システムでは、Microsoft365テナント統合が終えたことに伴い、DXツールの利用環境は整い、学生?教職員間でTeamsやSharePointを利用してのコミュニケーションが円滑となり、教職学協働作業に貢献することができました。今後はNotionとの連携を視野に入れつつ、積極的に活用します。また学生のPC必携化に伴い、豊洲、大宮PC教室を刷新し、CBT対応を可能とする整備を行います。更に工学部課程制に対応した分野横断型の学びに対する新たな教務システムを開発します。
9. 学生募集?女子学生の拡充
創立100周年に向けた成長戦略の一環として、女子学生比率30%以上を目標とし、奨学金制度の整備や女子校との連携協定、女子高校生対象のインターンシップやイベントを実施しています。その成果として、2023年度には女子入学者比率が20%を超えました。また全国型大学の復活を目指し地方出身学生比率25%以上を新たな目標に掲げ、奨学金の創設や各県を代表する新進高校や工業高校などの特別指定校との連携を通じて強化を図っています。10. キャリア教育
芝浦工業大学では、入学時から将来を見据えた支援体制として、学生一人ひとりの仕事観を醸成し、学びの指針となるように支援しています。入学時から将来に向けた目標設定と学生生活の充実を目指し、各学年に合わせたキャリア指導を行っています。就職活動支援では、専門スタッフが個別進路指導を行う、エントリーシートの添削や面接練習でのアドバイスなど本番に向けた実践的な支援を行っております。また就職支援システムを活用した求人情報、企業セミナーや卒業生の就職活動報告書など、就職に関するあらゆるサービス情報を提供し、ミスマッチのない就職活動を後押ししています。内定後には資格取得の推奨や社会人マナーの修得などをフォローするなど、入学から卒業まで一貫した支援に力を入れています。個々の学生に寄り添い、真に「納得できる就職」の実現に重きを置きつつ、学生の性格?特性を把握し本人の希望も踏まえたきめ細やかなキャリア教育を地道に実践しています。これにより、就職率はもとより就職先の質の高さも具備する大学として「就職に強い大学」と社会からも評価されています。本学では、就職内定が得られさえすればよいという安易な姿勢を排し、将来に向け継続的に取り組みたいことを明確に意識させ、より高い目標を設定のうえ志望企業にチャレンジする強い気持ちが持てるよう、就職担当教員はもとより、研究室で日々直接学生指導に当たる教員とも連携協力しながら支援していきます。このような取り組みが実り、有名企業400社への実就職率は上昇しており、今後も高い水準の目標を立て学生支援を行ってまいります。また留学生の就職支援も強化することにより世界に通じる技術者の輩出を目指します。
時宜に応じた学生目線に立った支援?指導を要請できるよう、芝浦工業大学校友会、同後援会との更なる協力体制の維持強化にも注力します。
11. 学生支援の充実強化
芝浦工業大学はキャンパスごとに「学生課」、「大学院課」、「キャリアサポート課」を設置し、修学支援、課外活動支援、就職?進路支援等あらゆるサービスを提供しています。2023年3月には豊洲キャンパスでの修学に便利な西葛西に提携寮を契約し、運用を開始しました。また11月には大宮キャンパスに芝生が広がる「だんだん広場」を整備し、学生の憩いの場を提供しています。2024年3月にオープンした芝浦工業大学熱海セミナーハウスは授業や課外活動で利用するほか、友人らとのコミュニケーションを深める場としても活用できる施設です。これからも各キャンパス整備をとおして学生満足度の向上を目指します。教学執行部および学生センターでは、年に1回、学生から要望を聞く場を設け、正課?正課外に関わらず、全学関連機関にて意見交換を行い、組織的な学生支援を実施しています。このほか、学生の海外留学、大学院進学、女子学生、地方学生への財政支援、TOEICスコアの向上による学生の英語力強化支援などを継続していきます。そのほか、課外活動等にて優秀な功績を挙げた場合に表彰するSIT賞や課外活動奨励金、学生プロジェクトなど学生の各種活動に関する支援にも引き続き注力します。
芝浦工業大学校友会、同後援会との連携による就職?進路支援、修学支援?課外活動支援等も引き続き強化いたします。
12. 附属?併設学校の強化、中高大連携と理系女子の育成
13. キャンパスや諸設備の整備
14. リスクマネジメント体制の強化
15. 地域貢献?社会貢献
高校生の化学への探究心の醸成及びリーダーシップの育成を目的として、本学が大阪公立大学から引き継いだ高校化学グランドコンテストが、2023年10月に豊洲キャンパスで開催されました。協賛企業15社、国内高校参加80チーム、海外招聘3チーム、延べ900名が参加する大イベントとなり、最終選考ではポスターセッションに加え、口頭によるプレゼンテーションが行われ、文部科学大臣賞をはじめとする各賞の授与が行われました。本学化学系教員の全面的なバックアップと職員の協力によって成功裏に終わりました。2024年度は120チームの参加を目指しています。
大学における公開講座は、大学の第3の機能である「社会貢献」の役割を担っています。大学が持てる専門知識を広く社会?地域に還元することは大学の使命であると捉え、「芝浦工業大学らしさ」を前面に打ち出した公開講座を積極的に開講していきます。STEAM教育と関連した公開講座の拡充や、リカレント教育プログラム?履修証明プログラムの受講者拡大を目指したコースの設置に取り組みます。
地域との交流では、豊洲キャンパスは地域に開かれたキャンパスとしてフラワーガーデン、シバウラキッズパーク、レストラン?カフェ、ストリートピアノなど地域との交流の場となり、大宮キャンパスでも「だんだん広場」の活用をはじめキャンパス整備を実施し地域に開かれたキャンパスを目指しています。更に熱海セミナーハウスのオープンをきっかけに熱海市役所とのコラボレーションによる公開講座の開催など、熱海市や市民の皆さんとの交流に取り組みます。