諸田歩美さんが日本材料学会 第16回地盤改良シンポジウムにて優秀発表者賞を受賞
- 社会基盤学専攻
受賞者
諸田 歩美 さん(理工学研究科/社会基盤学専攻1年)
指導教員
稲積 真哉 教授(工学部)
学会?大会名
日本材料学会 第16回地盤改良シンポジウム
賞名
優秀発表者賞
発表題目
場所打ち杭の建設における安定液の性状がコンクリートとの置換に及ぼす影響
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研究背景?目的
日本では、多くの都市が軟弱地盤上に発展している。その結果、液状化や地盤沈下などの地盤災害が多くの都市において深刻な問題となっており、軟弱地盤に対する対策が技術的な課題となっている。軟弱地盤の安全性、強度、支持力を向上させるための手法として、基礎構造が採用されているが、本研究では、その中でも杭基礎に分類される場所打ちコンクリート杭工法に着目した。本工法では、掘削時に孔壁の崩壊を防止するために安定液が使用される。しかし、施工の進行に伴い、土砂の混入により安定液の性状が劣化することがある。このような安定液の劣化は施工不良の原因となり得るため、劣化した安定液中でのコンクリートの挙動や、安定液とコンクリートの置換効率を把握することが重要である。しかしながら、地盤掘削による施工現場では、孔内でのコンクリートや安定液の挙動を直接観察することは困難である。
この問題を解決するため、本研究では、施工現場を模擬したモルタル打設試験を実施し、さらにMPS-CAE解析を用いてコンクリートおよび安定液の挙動を可視化し、置換効率の評価を試みた。
研究内容
場所打ちコンクリート杭工法とは、地盤を掘削し、周囲の地盤の崩壊を防ぐために安定液を孔内に充填し、鉄筋籠を設置後、トレミー管を使用して底部からコンクリートを打設して杭を形成する工法である。掘削中に安定液を孔内に充填することで、孔壁面に不透水膜が形成され、その膜に安定液の水頭圧が作用することで孔壁の崩壊を防止する。
本研究では、場所打ちコンクリート杭工法における安定液とコンクリートの置換に関する挙動を評価するため、実現場を模擬したスライムが底部に堆積した安定液へのモルタル打設試験を行い、粒子法に基づく可視化および数値シミュレーションを試みた。その結果、施工不良の一因となるスライムの堆積や安定液の滞留、残存が確認された。このことから、MPS-CAE解析を用いて安定液内でのコンクリートの置換効率を分析?評価できることが示唆された。
今後の展望
MPS-CAE解析においては、各打設ごとにモルタルを色分けし、安定液中の砂をモデル化することが必要であり、再現性の向上が求められる。さらに、コンクリートを用いた実大規模の試験を実施し、その結果を基にしたMPS-CAE解析を行い、試験の再現性を高めることが重要である。これらの解析結果に基づいて、コンクリート杭の打設における置換効率を評価し、劣化した安定液や安定液中に発生するスライムの挙動が打設に与える影響を明らかにすることが今後の課題となる。