諸田歩美さんが地盤工学会 第59回地盤工学研究発表会にて優秀論?発表者賞を受賞
- 社会基盤学専攻
日本の多くの都市は軟弱地盤の上に発展しており、液状化や地盤沈下といった地盤災害が頻発しています。これらの地盤災害に対処するために、さまざまな基礎工法が採用されていますが、本研究ではその中でも場所打ちコンクリート杭工法に着目しました。この工法では、掘削中に孔壁の崩壊を防ぐために安定液が使用されます。また、安定液は掘削により生じた土砂やスライムの沈降を促進し、置換流体としての役割も果たします。しかし、施工が進行するにつれて安定液の性状が劣化し、それが施工不良の原因となる可能性があります。特に、コンクリートと安定液の相互作用や置換効率の評価が重要です。
本研究では、これらの課題に対応するため、施工現場を模擬したモルタル打設試験を実施し、それに基づいたMPS-CAE解析を行うことで、安定液とコンクリートの挙動を可視化し、その相互作用を評価しました。
研究内容
場所打ちコンクリート杭工法は、地盤を掘削しながら孔壁の崩壊を防ぐために安定液を使用する工法です。この工法では、鉄筋籠を設置した後、トレミー管を用いてコンクリートを底部から打設し、杭を形成します。掘削時には安定液を孔内に充填し、孔壁に不透水膜を形成することで、水頭圧を利用して孔壁の崩壊を防ぐ仕組みです。
本研究では、この工法における安定液とコンクリートの挙動を評価するため、施工現場を模擬した実験を実施しました。具体的には、安定液にモルタルを打設する試験を行い、粒子法を用いたシミュレーションを通じて、コンクリートと安定液の相互作用や、施工不良の原因となるスライムの堆積や安定液の滞留を確認しました。その結果、MPS-CAE解析を用いることでコンクリートの置換効率を分析し、評価する手法が有効であることが示唆されました。
今後の展望
今後の研究では、MPS-CAE解析の精度向上を図るために、流入条件の詳細な検討が不可欠です。特に、打設ごとにモルタルの色分けを行い、安定液中の砂のモデル化を進めることで、スライムの発生メカニズムやその挙動についての理解が深まることが期待されます。また、コンクリートを用いた実大規模試験の実施が重要であり、その結果を基にMPS-CAE解析を適用し、現場条件を忠実に再現することを目指します。これにより、安定液の劣化やスライムの挙動がコンクリート杭の打設に与える影響を、置換効率の観点から定量的に評価できるようになると考えられます。