黒田 知暉 さんが公益社団法人日本金属学会 2021年春期講演大会で優秀ポスター賞を受賞

2021/05/06
  • 材料工学科
【受賞者】
黒田 知暉(2021年3月材料工学科卒業)

【共著者】
増山 晴己 (2021年3月材料工学専攻修了)
戸田 佳明 (物質?材料研究機構)
松永 哲也 (物質?材料研究機構, 東京大学)
伊藤 勉 (富山県立大学工学部)
渡邊 誠 (物質?材料研究機構)
小笹 良輔 (大阪大学工学部)
石本 卓也 (大阪大学工学部)
中野 貴由 (大阪大学工学部)
下条 雅幸 (材料工学科)
御手洗 容子 (東京大学 物質?材料研究機構)

【指導教員】
下条 雅幸 教授 (材料工学科)

【学会?大会名】
公益社団法人日本金属学会
2021年春期講演大会

【賞名】
優秀ポスター賞

【発表題目】
耐熱Ti合金三次元積層材の力学特性に対するミクロ組織の影響

黒田さん本文
Ti合金は600 ℃以下で、耐酸化性やクリープ特性、疲労特性に優れることから航空機エンジンの中温部に用いられていますが、エンジン熱効率向上のため、耐熱性の向上が必要とされています。
物質?材料研究機構(NIMS)では耐酸化性向上と固溶強化を目的にNbとZrを添加したTi-Al-Nb-Zr系合金の研究が行われてきました。
先行研究では、クリープ特性と疲労特性のバランスの良い組織の作製に取組みhcp-α+bcc-β2相域で加工熱処理をし、組織制御を行うことで、小さな旧β粒内にα+β層状組織を作製し、等軸α相の量を極力減少させた組織を作製しました。
この組織は商用材として用いられるような10%程度生成するBi-modal組織に比べクリープ寿命が2倍長くなることが示しましたが、熱処理温度の制御が難しいことが課題にありました。そこで本研究では、従来の鍛造ではなく新たに三次元積層造形技術に注目しました。
その中でも金属粉末の急速な溶融?凝固により微細な組織形成を可能とするレーザー粉末床溶融結合法を用い、微細な旧β粒内にα+β層状組織の生成を試みました。そして積層条件および組織がどのように力学特性に影響しているかを鍛造材と比較しながら調査を行いました。

Ti-6Al-4Nb-4Zr(wt%)の金属合金粉末を用いて冷却速度の異なる2つの条件で試料を造形しました。
冷却速度の速い条件では粒径100 μmの粒内にマルテンサイト組織が形成し、冷却速度の遅い条件では粒径300 μmの粒内にα+β層状組織が形成していました。
これら積層まま材に熱処理を施すことでマルテンサイト組織はα相とβ相に分解し、層状組織ではα相とβ相の幅が大きくなり、また欠陥体積率が減少を示しました。
600 ℃137 MPaの条件でクリープ試験を行った結果、積層熱処理材は鍛造材よりも、粒界滑りを起こしにくく、粒内に形成した層状組織が転位の運動の妨げとなるために、鍛造材のbi-modal組織よりも長い破断寿命を示しました。

今回の研究結果から積層造形と熱処理を組み合わせることにより粒径と組織を自在に制御可能であることが示唆され、クリープ特性と疲労特性のバランスの取れた材料創製が期待できると考えています。
また、Ti合金の高温特性向上?積層造形によるニアネット成形の組み合わせによって航空機の軽量化が実現でき、低燃費で環境負荷の少ない、現代のニーズに応えることのできる航空機の開発につながると考えられます

お問い合わせ


芝浦工業大学 企画広報課

〒135-8548 東京都江東区豊洲3-7-5(豊洲キャンパス本部棟2階)

TEL:03-5859-7070 / FAX:03-5859-7071

E-mail:koho@ow.shibaura-it.ac.jp