世界初、プラズマクラスター技術による運転能力向上効果を確認
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運転時のブレーキ操作反応時間、眠気抑制、ハンドル操作性を検証
芝浦工業大学(東京都江東区/学長 山田純) SIT総合研究所 特任研究員 伊東敏夫(株式会社ハイパーデジタルツイン※2 代表取締役)は、シャープ株式会社と共同研究を実施し、シャープのプラズマクラスター技術について、運転中のヒトへの運転能力向上効果についてドライビングシミュレータで検証を行いました。その結果、運転中のヒトに対してプラズマクラスターイオンを照射することで、運転能力が向上することを世界で初めて確認しました。
シャープ株式会社は、脳波測定を用いた研究により、プラズマクラスター技術で自動車運転中のヒトの集中力維持効果※3を2020年に実証しています。今回、集中力維持というヒトの状態に関する効果だけでなく、運転者の運転行動(認知?判断?操作)に関する能力向上にも効果が期待できると考え、手動運転および今後拡大が予想される自動運転※4についてドライビングシミュレータによる研究を実施しました。その結果、手動運転についてはブレーキを踏むまでの反応時間短縮およびハンドル操作性向上の効果を、また自動運転については、眠気抑制およびテイクオーバー※5後のハンドル操作性向上の効果を確認しました。このように運転者の具体的な行動に影響を与える結果が得られたのは、今回が初めてとなります。
手動運転においては、漫然運転(ぼんやり運転)が法令違反別死亡事故件数の第1位※6となっており、また自動運転下では、急に運転者自身が手動で対応する場合に反応遅延など、運転行動のミスによる事故が懸念されています。運転の完全自動化には時間を要すると見込まれますが、漫然運転の抑止策となり得る今回の研究結果は大きな意義があるものと考えられます。
【芝浦工業大学ニュース】世界初、プラズマクラスター技術による運転能力向上効果を確認 (692.4KB)
※1 イオン放出式の空気浄化技術において。(2023年9月26日現在、シャープ株式会社調べ)
※2 芝浦工業大学発のスタートアップ企業。センサーネットワーク技術とロボティクス技術の融合により、超小型モビリティ事業を展開。
※3 自動車運転中のストレス抑制と集中維持を実証(2020年)https://jp.sharp/plasmacluster-tech/closeup/closeup05/
※4 当試験の自動運転はあくまで人がする必要のある運転支援レベルのもの。
※5 自動運転システムでは対応できず、人が運転をしなければならなくなった状態のこと。
※6 警察庁「欧洲杯足彩app下载_欧洲杯下注平台-【直播*网站】4年中の原付以上運転者(第1当事者)の法令違反別死亡事故件数の推移」より。
プラズマクラスター、Plasmaclusterはシャープ株式会社の登録商標です。
伊東 敏夫博士(芝浦工業大学 SIT総合研究所 特任研究員)のコメント
手動運転の試験における反応時間測定の結果によると、プラズマクラスターイオンを照射することによって、異常検知から通常より約0.5秒早くブレーキを踏むことが確認できた。これは時速50kmで走行中であれば、約7m手前で停止できることとなる。また現在の自動運転は、あくまで主体は運転者である「部分運転自動化」といわれるレベル2に該当し、自動運転システムが対応できない状況になると、運転者による手動運転に切り替わる可能性がある。自動運転中は運転者の注意力が低下しやすいため、眠気を抑制しハンドル操作性を向上可能なプラズマクラスター技術を応用すれば、急に手動運転に切り替わった場合でも、事故を防ぐ可能性が期待できる。今後もさらなるプラズマクラスター技術の応用に期待したい。
プラズマクラスターイオンによる運転能力向上効果検証の試験概要
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- 試験実施者:伊東 敏夫 博士(芝浦工業大学 SIT総合研究所 特任研究員)
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- 試験空間:芝浦工業大学 実験室
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- 被験者:20~24歳の男女20名
- 試験装置:プラズマクラスター技術搭載試験装置 ドライビングシミュレータ(DS)
プラズマクラスターイオン濃度:被験者位置 約100,000個/cm3
試験方法:高速道路を模した走行コースを、手動あるいは自動運転※で走行。
※ 自動運転の試験はハンドルに手を添えた状態で行い、前方に障害物が現れた際は手動運転に切り替わる設定で実施。
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図1.DSの外観
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図2.試験イメージ
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図3.DS走行中の画像
1.手動運転時:
集中力維持が前方の早期認知によるブレーキ操作およびハンドル操作に影響すると考えるため、以下の項目についてそれぞれ評価。(試験時間各40分間)
① ブレーキを踏むまでの反応時間(先行車が停止表示後ブレーキを踏むまでの時間を評価)
② ハンドル操作の滑らかさ※※(障害物を避ける時のハンドル操作の滑らかさを評価)
2.自動運転時:
運転支援により注意力が低下し、眠気増加および手動運転へ切り替え時の反応遅延が懸念されるため、以下の項目について評価。(試験時間20分間、③を実施した後④を評価)
④ テイクオーバー後のハンドル操作の滑らかさ※※(②と同様)
- ※※ 手動運転時のハンドル操作の滑らかさ:解析区間が長いためステアリングエントロピ―法(乱雑さを分析する手法)で評価
- 自動運転時のハンドル操作の滑らかさ:解析区間が短いためハンドル操舵角の微分分散値(ハンドルを回す角度のばらつきの値)で評価
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図4.顔表情評定による眠気?居眠りレベル
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図5.ハンドル操作の滑らかさ(イメージ)
結果:
1.手動運転時の評価結果
送風のみと比較して、プラズマクラスターイオンありの方に以下の点を確認した。
① 先行車が停止表示後、ブレーキを踏むまでの時間が約0.5秒早くなること(図6)
② 障害物を避ける際に滑らかに避けられること(図7)
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図6.ブレーキを踏むまでの反応時間
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図7.ハンドル操作の滑らかさ
2.自動運転時の評価結果
送風のみと比較して、プラズマクラスターイオンありの方に以下の点を確認した。
① 眠気が抑制されること(図8)
② テイクオーバー後、より滑らかなハンドル操作で障害物を避けられること(図9)
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図8.顔表情評定による眠気評価
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図9.テイクオーバー後のハンドル操作の滑らかさ
以上の結果より、プラズマクラスター技術に運転能力向上効果があることを確認した。
自動運転レベルの定義概要 ※首相官邸「官民ITS構想?ロードマップ(2021年6月15日)」を元に作成。
運転主体 |
レベル |
定義 |
自動運転操作 |
外界監視 |
故障時の対応 |
ドライバー 有無 |
人 |
0 |
自動運転 なし |
× ドライバーが 実施する |
× ドライバーが 外界監視する |
× ドライバーが 対応する |
有 ドライバーの 乗車が必要 |
1 |
運転支援 |
△ 1つの操作のみ システムが実施 |
× |
× |
有 |
|
2 |
部分運転 自動化 |
〇 システムが複数 の操作を実施 |
× |
× |
有 |
|
システム |
3 |
条件付運転 自動化 |
〇 |
〇 外界監視不要で 読書など可能 |
× |
有 |
4 |
高度運転 自動化 |
〇 |
〇 |
〇 故障時も システムが対応 |
有 |
|
5 |
完全運転 自動化 |
〇 |
〇 |
〇 |
無 ドライバーの 乗車不要 |