スーパーグローバル大学10年の歩み
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2014年、芝浦工業大学はスーパーグローバル大学創成支援事業(SGU事業)に唯一の私立理工系大学として採択されました。SGU事業は2023年度をもって完成年度を迎えましたが、この10年の取り組みを通して、教育制度や人材育成、海外大学とのつながりの面で、どのような変化を芝浦工業大学にもたらしたのかを見ていきます。
「スーパーグローバル大学創成支援(SGU)事業」とは?
大学のグローバル化政策のひとつとして、2014年に文部科学省により創設された事業。世界トップレベルの大学との交流?連携を実現、加速するための新たな取り組みや、人事?教務システムの改革、学生のグローバル対応力育成のための体制強化など、国際化を徹底して進める大学を重点支援する。同事業には世界レベルの教育研究を行う大学「タイプA(トップ型)」(13大学)と日本社会のグローバル化を牽引する大学「タイプB(グローバル化牽引型)」(24大学/芝浦工業大学含)の37大学が採択された。
国際交流プログラムの発展
SGU事業に採択される前から、本学がグローバル化を推し進めていくための転換期がいくつかありました。その代表的なものとして挙げられるのが、「マレーシア?ツイニングプログラム」と「ハイブリッド?ツイニング?プログラム(HBT)」、「国境なき科学」です。
マレーシア政府が円借款事業として、選抜された留学生を派遣する事業が「マレーシア?ツイニングプログラム」です。マレーシア現地で日本語および理工学の基礎教育を行い、その後学生たちは日本の大学へ編入し、学位を取得します。1993年から現在にいたるまで、本学はプロジェクト幹事校として編入学などの仕組み作りから理工学教育教員の現地派遣までを担ってきており、本学の本格的なグローバル化の礎となりました。
2005年に東南アジア各国を代表する理工系大学をパートナーとし、それら協定校で修士課程1年次を修了もしくは修士学位を取得した優秀な学生を、本学の修士課程2年次もしくは博士後期課程1年次に、授業料免除に加え生活費として国費並みの奨学金を給付するという条件で受け入れる「ハイブリッド?ツイニング?プログラム(HBT)」を開始しました。このプログラムで学んだ留学生たちは、学位取得者の約7割にあたる50人ほどが母国で教員となり、その後の産官学連携コンソーシアム(GTIコンソーシアム)の設立や、国際的な学生交流プログラムであるグローバルPBLの開催数を飛躍的に拡大させる存在となりました。
「国境なき科学」は、ブラジル政府が推進した10万人の理工系学生を海外に派遣し育成する政策です。日本では2013年度から実質的な受け入れが始まり、この政策が終了する2016年度までに本学は国内最多の162人を受け入れました。この過程で、英語開講される専門科目を大幅に増やしたことが、研究室配属型の留学や、本学で取得した単位を母国に持ち帰り単位認定を受ける「サンドウィッチプログラム」の制度の確立へとつながりました。
グローバルPBL の進展
学生交流プログラムとして最も特徴的と言えるのが、グローバルPBLです。グローバルPBLは夏期?春期の長期休暇の時期を中心に、おおむね10日から1カ月の期間で行われ、芝浦工業大学の学生と海外協定校の学生との間でチームを作り、手を動かしディスカッションを重ねながら、社会的?技術的課題解決の方法を導き出し、発表まで行います。短期間ではあるものの、同じ問題を前にしながら互いに一生懸命英語でコミュニケーションをとる経験は学生たちにとっては大きな刺激となっており、教育効果の高いプログラムです。基本的に学科単位で企画され、課題設定が専門分野に近いことで学生も参加しやすく、年々開催件数が増えました。
2013年度には年間でわずか8件だったものが、COVID-19感染拡大前の2018年度には派遣型、受入型(本学内で行うもの)合わせて93件が実施され、グローバルPBL参加学生849人を含む計1671人の本学学生が派遣プログラムに参加しました。コロナ禍以降はオンライン型PBLへの開発につながりました。このプログラムが本学の海外派遣学生の数を押し上げた大きな要因となっています。
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海外協定校の拡大
PBLの実施件数の増加は、協働する海外大学の増加を生み、現在200を超える大学?研究機関と協定を結んでいます。SGU構想調書には、協定校数の目標を「100校」と設定していましたが、目標を大きく上回る結果となりました。グローバルPBLは短期間のプログラムですが、本学のプレゼンスを高める仕掛けとして確実に機能しました。そして副次的効果として、より多くの交換留学生の受け入れも進みました。
海外へ開かれていく過程で、世界の理工系大学のコンソーシアムにも加盟し、そうしたネットワークを通して人材の交流、プログラムの共同実施などが活発に行われています。
そして本学におけるSGU事業の重要な柱となっているのが、東南アジアを軸とした産官学連携コンソーシアム(GTIコンソーシアム)です。現在では240を超える国内外の機関が加盟し、この枠組みの中で加盟企業?自治体?国などの関連機関(企業など)が設定した課題に取り組むグローバルPBLなども行われ、国内の加盟大学からも参加があります。
GTIコンソーシアムの加盟機関は着実に増え続けており、SGU事業がもともと持っているグローバル化の横連携?横展開の思想を着実に実行しています。
課程の改革と学生の変化
2017年度に大学院理工学研究科で開設した国際理工学専攻、およびシステム理工学部の3学科で開始した国際プログラム(2019年に5学科に拡大)が開設されました。日本人学生に一学期以上の海外留学や、卒業論文を英語で作成?プレゼンを行うことを必須とすることで、グローバル理工系人材としての能力育成を行っています。また2020年には、工学部において英語による教育?研究指導で学士学位を取得できる先進国際課程を開設しました。
現在では、研究室に所属する交換留学生も増えていることで、学生は国内にいながら英語で研究についてのディスカッションを行う機会も増えるなど、技術者として将来活躍していくための環境がキャンパス内でも実現しました。こうした環境の中で、すべての学生が外国語の必要性を認識しています。SGU事業における目標として、CEFR B1またはTOEIC® L&Rのスコア550点を取得することを設定していますが、2013年度全学のCEFR B1達成数は約380人(全学生数の約4.5%)に対し、2023年度末には6673人(同68.7%)と、劇的に上昇しました。
SGUの集大成
2024年2月、「マレーシア?ツイニングプログラム」を通じて長年にわたり芝浦工業大学の国際化に寄与されたマレーシア副首相アフマド?ザヒド?ハミディ氏へ名誉博士号を贈呈しました。グローバル化への取り組みが結実した一例としてSGUの集大成に相応しい事例となりました。
SIT ASEANサテライトオフィス(バンコク)を開設
しかし、正規留学生の受け入れ数には課題を残します。そのため2024年度以降、東南アジア全体からの正規留学生獲得を始めとしたグローバル事業推進のためにタイ(バンコク)にサテライトオフィスを開設します。職員が現地に駐在し、タイをハブとして東南アジア諸国の大学との教育研究の連携、現地での就職支援などを進めていきます。
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サテライトオフィスの様子
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サテライトオフィスが入居するビルディング