高校化学グランドコンテスト2024 文部科学大臣賞は「ホウ素ケージド技術による細胞機能の光制御」広尾学園高等学校(東京都)秋庭琉衣さんが受賞
- プレスリリース
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芝浦工業大学(東京都江東区/学長 山田純)が、主催する「高校化学グランドコンテスト2024」の最終選考会が10月26日、27日芝浦工業大学豊洲キャンパスで開催され、広尾学園高等学校の「ホウ素ケージド技術による細胞機能の光制御」が1位の文部科学大臣賞に輝きました。また、同校は特別協賛企業賞(第一三共賞)とのW受賞となりました。
【芝浦工業大学ニュース】高校化学グランドコンテスト2024 文部科学大臣賞は「ホウ素ケージド技術による細胞機能の光制御」広尾学園高等学校(東京都)秋庭琉衣さんが受賞
■「ホウ素ケージド技術による細胞機能の光制御」 研究概要
ケージド化合物は、生物活性物質に光で取り外し可能なユニットを連結し、一時的に不活性化した分子であり、薬剤の活性化を任意の時間と場所でコントロールできる。従来のケージド法は特定の官能基(分子の中で特定の化学反応を起こす部分)を持つ分子のみが対象で、多くの生物活性分子のケージド化が困難だった。最近、可視光で炭素-ホウ素結合を切断するホウ素ケージ化合物を用いることで、ケージド化の対象の分子が大幅に増加したが、この手法は構造の自由度に乏しいことが課題であった。
- ■広尾学園高等学校の受賞コメント
- 広尾学園高等学校3年 秋庭 琉衣さん
- 研究を楽しく続けてきた結果、このような賞を受賞することができてとても嬉しく思っております。これまでご指導いただいた東京科学大学の隅田有人准教授にも本日の結果と感謝の気持ちをお伝えしたいです。今後は海外大学の受験を予定しており、アメリカで研究を続けていきたいです。本日は海外チームの参加もあり、とても刺激になり楽しかったです。
■講評
第一三共株式会社 渡辺剛史様
我々は「世界中の人々の健康で豊かな生活に貢献する」という企業理念のもとサイエンス&テクノロジーによる社会への貢献に取り組んでおり、今回の発表は高いレベルのサイエンスを発揮されていること、生命関連企業としてバイオロジーに適応できる研究であることを評価いたしました。
審査委委員長 名古屋大学名誉教授?元IUPAC会長 巽和行様
口頭発表された10チームはいずれも素晴らしかったです。そして、すべてのチームがナンバー1であると感じるような内容でした。また、多くの若い才能が集まり、日本の未来は明るいと感じました。このような場での出会いはみなさんの将来にとってとても重要なものになるでしょう。是非、この大会をきっかけに友人を作って、これからの研究で切磋琢磨してください。
■高校化学グランドコンテスト2024 最終選考会
高校化学グランドコンテストとは…全国の高校生および高等専門学校生(3年生以下)が行っている「学習研究活動」を支援し、高校生自らが自主的な探究活動を楽しみながら科学的な創造力を培い、将来、科学分野で活躍できる人材の育成を念頭に置いて行っている教育支援プログラムです。2004年から大阪市立大学を中心に実施してきましたが、コロナ禍を経て、2023年度からは芝浦工業大学が主催しています。
10月26日(土)、27日(日)に芝浦工業大学豊洲キャンパスで第19回最終選考会が開催され、第一次審査を通過した全国の高校生90チーム以上302名と海外から招へいした3チーム11名が研究の成果を発表し、2日間合計で延べ800人以上が来場しました。
1日目に開催されたポスター発表では、各校の生徒たちが研究成果をまとめたポスターを前に他校の生徒や審査員の先生らへ熱心に説明をしていました。審査員から貴重なアドバイスをもらうほか、高校生同士でより良い実験手法について模索する様子も見られ、活発な議論が生まれていました。また会場には協賛企業によるブースも並び、参加者たちは日頃の化学の学習が社会にどのようにつながっているのかを学んでいました。
そのあと大学のSky Cafeteriaで行われたレセプションでは、お互いの研究や普段の学校生活について語り合うなど、盛んに交流が図られました。化学に関するクイズ大会や大学公式マスコットキャラクターのテクしばくんの登場もあり、会場は大いに盛り上がりました。
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オープニングスピーチ
高校化学グランドコンテスト実行委員長芝浦工業大学 学長 山田 純
昨年初めて芝浦工大でこのコンテストを開催させていただき、今年はさらにエントリーが増え、海外の招へい校含め102チームに参加いただきました。
参加者の皆さんには、日頃の化学の学習そして探究の成果を披露してもらうとともに、ぜひ自分のチーム以外の他校の発表にも参加して、質問をしてみてください。
海外の生徒とのコミュニケーションにも挑戦してみてほしいです。外国の友人を作ることができる良い機会になるでしょう。
引率いただきます教員の皆様におかれましても、日頃のご指導ありがとうございます。
本コンテストを高校生だけでなく先生同士の交流の場としていただければ大変嬉しく思います。
何か今後のご指導のヒントがあるかもしれません。
それでは、2日間化学について語り合ってください!
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2日目の口頭発表では、一次審査を通過した10チームが研究成果を発表。
多くのチームが英語で発表していました。
審査員を含む会場からは多くの質問が上がり、鋭くも優しい質問に応答していました。
また台湾から2チーム、シンガポールから1チームの海外招へいチームも発表し、研究だけでなく自国の紹介も行っていました。
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続いて、東京大学名誉教授の尾嶋正治先生の特別講演が行われ、科学技術史の碩学に触れた参加者は、「科学ルネサンスを起こすのは化学しかない」とのメッセージを熱心に聞き入っていました。
最後に口頭発表?ポスター発表の各賞が発表され、今年のコンテストを閉会しました。なお次回も、2025年10月25日(土)、26日(日)に豊洲キャンパスでの開催が決定しています。
審査結果は以下のとおりです。
〇グランドアワード
?文部科学大臣賞
広尾学園高等学校「ホウ素ケージド技術による細胞機能の光制御」
?化学未来賞
長野県飯山高等学校 自然科学部MBR班「二酸化炭素吸収ボールMBRの開発」
?化学技術賞
宮城県仙台第三高等学校 自然科学部化学班 「水酸化鉄(Ⅲ)コロイド生成におけるガラス着色の研究」
芝浦工業大学は、上記3チームの海外国際フォーラム※への参加を支援します。
※シンガポールで実施されるサイエンスフェア「17th International Science Youth Forum @Singapore 2025 (ISYF)」
台湾で実施されるサイエンスフェア「Taiwan International Science Fair (TISF 2025)」
〇アワード
?審査委員長賞
静岡県立清水東高等学校 自然科学部化学班「疑似濃淡電池の反応機構の解明」
?審査委員特別賞
福島県立会津学鳳高等学校 SSH探求部「アラニナト銅水溶液中に生じた赤色薄膜の物質同定と生成過程の解明」
?口頭発表金賞
●静岡北高等学校 科学部水質班、●長野県諏訪清陵高等学校 化学部、●滋賀県立虎姫高等学校 究理ⅡS化学ゼミ、●愛媛県立西条高等学校 科学部、●奈良県立西和清陵高等学校 サイエンスチーム
?ポスター賞
●安田学園高等学校 サイエンスクラブ、●熊本県立熊本北高校 自然科学部化学分野、●金沢大学人間社会学域学校教育学類附属高等学校、●福島県立福島高等学校(福島県)SSH部、●富山県立富山中部高等学校 スーパーサイエンス部、●大阪桐蔭高等学校 理科研究部、●市立札幌開成中等教育学校 コズモサイエンス4班、●岡山県立岡山朝日高等学校 化学部、●愛媛県立西条高等学校 科学部、●愛媛県立三島高等学校 ケン化組
〇特別協賛企業賞
?第一三共賞
広尾学園高等学校「ホウ素ケージド技術による細胞機能の光制御」
?NAGASE賞
奈良県立西和清陵高等学校 サイエンスチーム「ウグイスの粉を使ったフラーレン水分散液の調製」
?DICーColor and Comfortー賞
宮城県仙台第三高等学校(宮城県)自然科学部化学班「水酸化鉄(Ⅲ)コロイド生成におけるガラス着色の研究」
?日本ゼオン?チャレンジ賞
長野県飯山高等学校 自然科学部MBR班「二酸化炭素吸収ボールMBRの開発」
?IHI賞
静岡北高等学校 科学部水質班「暑い!そうだ、CO2をあつめよう」
?資生堂賞
愛媛県立西条高等学校 科学部「Na2CO3を用いた輝安鉱(Sb2S3)の水熱合成 ~市之川産輝安鉱の謎を探る~」