しばうら人 古畑義矢さん(エレコム株式会社)
2022/03/14
- しばうら人
デザインも開発もできるオールマイティなデザイナーを目指して
芝浦工業大学デザイン工学科の第一期生として入学した古畑さん。プロダクトデザインを学んだ先で何を作り出しているのか。
人気製品を作り出す卒業生の仕事を探る
手探りだった学生時代
絵を描くことを子供のころから続けていた古畑さん。高校時代には、見た目のデザインだけではなく、モノの内部も設計できるようになりたいと建築設計などに興味を持っていた。そんな時、友人が持ってきた芝浦工業大学デザイン工学科一期生募集のチラシを見たことがきっかけで、プロダクトデザイン分野に興味を持ち進学。一期生ということでロールモデルになる先輩もおらず、何を学べばいいのか手探り状態。同級生は、企画、回路設計、プログラミング、デッサンなど得意とする分野はそれぞれで、何を強みにしていくかは自分次第だった。自分はプロダクトデザインに興味を持っていたが、正直何を強みにすれば職業としてデザイナーになれるのか分からない。とにかく、学外で情報を得るチャンスは逃さないようにした。学部3年?4年時には、TOKYO DESIGNERS WEEK(当時)という若手クリエイターが生活デザイン製品などを展示?交流するイベントに出品。その他にもグッドデザイン賞の審査補助アルバイトや家電メーカーでのインターンシップなどに参加し、他大学の学生と積極的に意見を交わした。「自分のデザイナーとしてのレベル感など同年代から得られる情報は貴重でした。その中で感じたのは、自分の強みです。美術大学の学生はデザイン力が高かったけれど、市場調査やコンセプト作りなど、その作品をなぜ作る必要があったのか背景となるストーリー作りは、デザイン工学科の強みだと思いました」。
エレコム株式会社との出会い
デザイナー職としての就職を目指して、文具?玩具?カメラ?PCサプライメーカーと多くの企業を受けた。「好きな製品のパッケージ裏を見て受けたいメーカーの名前を調べていたので、家電量販店や東急ハンズが就職活動の場でした(笑)」。その中で、PCサプライ製品を主力としていたエレコム株式会社は、当時自分が愛用していたマウスを販売していた企業。製品機能を単純化しデザインも良い部分に魅力を感じた。調べてみると商品企画からデザイン?製品開発までの製品化全体に携われる開発職の募集があり、製品の一部に携わる仕事の仕方より面白そうだと感じ、応募した。
デザインと工業製品
入社後はデザイナーとしてUSBケーブルやイヤホンなど、製品の市場調査から仕様の決定、デザインなど、発売までの一連の流れを担当。携わった製品が各デザイン賞を受賞するなど、入社してから3年経つころには、イメージしていた仕事ができるようになっていた。また、ここ数年で仕事の幅が変わってきたのを感じるという古畑さん。きっかけは、2017年グッドデザイン賞を受賞した「温度検知Type-Cケーブル」。スマートフォンを主に充電するケーブルだが、発熱事故が多発していると各キャリアから話があり、異常発熱を検知して充電を止める機能をつけることになった。これまで製品デザインを中心に仕事をしてきたが、このときは発熱検知素子の選択から、それを配置する適切な場所を割り出すなど製品開発の仕事にも対応。「一番難しかったことは、室温や接続するデバイスの違いなどケーブルの使用環境を細かく想定し、使用する際の安全性を確認すること。生産工場のある中国への出張も多くなりました。直接現地の会議に出席し、言葉や文化の違いがあったとしても意思の疎通ができるように図でわかりやすく示したりしています。まさか、海外へ出て仕事をするなんて、学生時代は想像もしていませんでした(笑)」。学生時代に勉強した、回路設計などの知識が生かされた経験となった。