短パルスレーザーでシリコン基板の内部のみを加工し光学素子(回折格子)の作製に成功
2021/03/24
- 研究
- プレスリリース
?Beyond 5G?時代に必要な半導体技術の貢献に期待
芝浦工業大学(東京都港区/学長 村上雅人)工学部機械工学科の松尾繁樹教授、徳島大学大学院社会産業理工学研究部の直井美貴教授らの研究グループは、完全に透明ではない短い波長のレーザーを用いて?シリコン基板の表面?裏面を傷つけずに内部だけを加工できる条件を調査。作製した回折格子が光学的に機能することを実証しました。この成果は半導体や集積回路におけるシリコンフォトニクスの技術発展に寄与することが期待されます。
中図:(a) 作製した回折格子で得られた回折光
下図:(b) 一次回折光の回折角の格子定数依存性
ポイント
- シリコン基板の表面?裏面を傷つけず内部だけを加工できる集光照射の条件を精査
- 作製された回折格子が、実際に機能することを実証
- 5G時代やBeyond 5G時代で多様な用途が見込まれる半導体において、シリコンフォトニクス技術などの発展に寄与することが期待できる
研究概要
5G時代やBeyond 5G時代では情報の大容量化と高速伝送化が飛躍的に発展し、半導体にはこれまで以上に多様な用途に応じた技術革新が求められます。そして半導体素材のシリコンウエハー製造では、情報処理や光通信システムの基盤技術として「シリコンフォトニクス(シリコン基板に発光素子や受光素子などを集積する技術)」の重要性が高まっています。しかし使われる技術は表面加工に関するものが多く、レーザーを用いた内部加工技術については、レーザーを集光してシリコンを分断するダイシングなど一部に留まっています。この内部加工技術の光学的な応用を目指した研究も行われていますが、その多くはシリコンに対して透明な波長のレーザーが用いられています。本研究では、これまでの研究よりも波長がやや短く、シリコンに対して完全に透明ではない波長のレーザーを用い、シリコン基板の表面?裏面を傷つけずに内部だけを加工できる条件を調査。そして、得られた加工条件から作製した回折格子が光学的に機能することを実証しました。この成果は、シリコンフォトニクスの要素技術へ発展することが期待されます。
今後は、内部加工によって生じる変化の内容解明や、変化を局在させる研究、実用的な使用用途を考案?作製する研究を行います。
論文情報
著者 :芝浦工業大学大学院修士課程 機械工学専攻 杉本幸大造(2018年度修了)
芝浦工業大学 工学部機械工学科 教授 松尾繁樹
徳島大学大学院 社会産業理工学研究部 教授 直井美貴
論文名 : Inscribing diffraction grating inside silicon substrate using a subnanosecond
laser in one photon absorption wavelength
掲載誌 : Scientific Reports
DOI : https://doi.org/10.1038/s41598-020-78564-z
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