豊洲キャンパス本部棟竣工記念
2022/05/25
- キャンパス
ダットサン寄贈に寄せて
自動車の素晴らしさ? クルマ文化の奥深さを後世に伝えたい
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2022 年4 月21 日、竣工式が開か れた豊洲キャンパス本部棟。そこに9 月から常設展示が予定されているダッ トサン セダン16 型(1937 年式)を 寄贈するのが、卒業生で全日本ダット サン会会長の佐々木徳治郎さんです。 長く自動車業界で活躍する佐々木さん に、クルマ文化への想いや大学時代 の思い出を伺いました。
一時代を築いたクルマ? ダットサンを寄贈
自動車とは工業製品の粋であり、1世紀前の大量生産開始以来、その普及と発展が社会に及ぼした影響は計り知れません。今般、ダットサン セダン16型を母校に寄贈させていただいたのも、貴重なクルマ遺産を1人でも多くの方に見ていただきたいという想いからです。ダットサンはかつて小型乗用車の代名詞ともされた車種。寄贈車はガソリン車の基礎の基礎ともいえる構造をしており、母校に展示していただけてこんなにうれしいことはありません。
私自身は地方の農家の出身で、子どもの頃は自動車を身近に見る機会がほとんどありませんでした。自動車を運転するなど夢のまた夢でしたが、芝浦工大に入学した1960年代には日本も本格的なマイカー時代を迎えており、「これからはクルマ社会。学ぶなら自動車工学だ!」と考え、運転免許もないのに自動車部に入部しました。入部後すぐ、大学近くの自動車教習所で免許を取得。部が保有していたダットサンで熟練の先輩から指導を受け、1週間の合宿へ。そこでダットサンで走っては修理することを繰り返し、技術を身につけていきました。当時の先輩の言葉で印象に残っているのが、「自動車整備は推理だ」。異音に気付くと車体に聴診器を当て、異常箇所を的確に察知する先輩の姿に、整備の楽しさ?奥深さを知りました。仲間とともに北海道や九州に遠征し、道中でエンジンを丸ごと入れ替えたこともいい思い出です。
修理工場を経営して50年 大学時代の学びが活きる
卒業時には「将来は修理工場を経営した い」と考えるようになり、メーカーではなくインターンシップで研修させていただいた民間自動車整備工場に就職しました。修行のかたわら、二級整備士の資格や職業訓練指導員の免許を取得し、東京都自動車整備振興会の講師も兼任。このとき、大学で教員免許を取得していたことが大変役に立ちました。1972年には株式会社サファリモータースを設立。会社員時代から日産自動車の関係者の方々とのおつきあいがあったため、役員車?広報車?展示車?コマーシャル車などの登録や整備などを任せていただき、現在に至っています。石原プロモーションの映画『栄光への5000キロ』やTVドラマ『西部警察』で扱う自動車の調達?登録?整備を担当するなど、時代を象徴する仕事も経験することができました。いまではクラシックカーも含めて約500台のメンテナンスを任せていただいています。
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もちろん、会社経営は順風満帆なときばかりではなく、1973年の第一次オイルショックでは売上が9割減になる危機もありました。先行きに悩んでいたとき、社用車200台の整備を任せてくださる会社が現れたのですが、同時にエンジンオイルの廃油を利用したストーブの耐久実験も受注。1年間社内で実験を続けてレポートを提出しました。このときも大学で学んだデータの取り方やレポートの書き方が大変役に立ち、「芝浦工大はまさに自分のための学校だった!」と感謝の気持ちでいっぱいになりました。
大学在籍中の自動車部 北海道?九州遠征
[遠征参加メンバー ]
福川 光男 1965 年 機械工学科卒業
鹿島道路株式会社常務取締役など歴任。
自動車性能実験のテストコース建設に貢献。
福井 武温 1966 年 電気工学科卒業
関電工株式会社で地下ケーブル敷設に貢献。
池上 紘一 1966 年 機械工学科卒業
電線加工にて社会貢献。
小野寺 為宇三 1967 年 機械工学科卒業
梱包業界にて社会貢献。
[遠征参加メンバー ]
福川 光男 1965 年 機械工学科卒業
鹿島道路株式会社常務取締役など歴任。
自動車性能実験のテストコース建設に貢献。
福井 武温 1966 年 電気工学科卒業
関電工株式会社で地下ケーブル敷設に貢献。
池上 紘一 1966 年 機械工学科卒業
電線加工にて社会貢献。
小野寺 為宇三 1967 年 機械工学科卒業
梱包業界にて社会貢献。
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全日本ダットサン会の使命は「1台でも多く動態保存する」こと
社業のかたわら、1985年には全日本 ダットサン会を設立し、全国のダットサン愛好者と交流を始めました。会発足の2年後、日本テレビから声をかけていただき、 グレートアメリカンレースに参戦したことも印象的な出来事でした。グレートアメリカンレースとは、カリフォルニアからフロリダまで北米大陸を約6000km 走破するもの。1936年以前登録のヒストリックカーでの参加が条件だったため、戦前のレースカー?ダットサンレーサーを復刻する必要がありました。ところが現物はすべて戦争で焼けて残っておらず、当時の雑誌や図面を参考に、古いダットサン2台のフレームやサスペンションなどを有効活用しながら3カ月かけて創り上げました。レースは12日間。アリゾナの砂漠で車がオーバーヒートし、ラジエーターから熱水が1mぐらい吹き上がったこともありました。靴底が溶けるほど灼熱の砂漠を経験すると、不思議なことに遠くにある水の匂いが分かるように。さらに毎日ゴールするたびに町を挙げての大パーティで現地の人々とクルマを通じて親睦を深めるなど、アメリカのクルマ文化の壮大さを知る、またとない経験ができました。
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グレートアメリカンレース参加の様子
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寄贈予定のダットサン セダン16 型(1937年式)
現在、全日本ダットサン会には約260名の会員さんが在籍され、イベント参加や交流会の開催など親睦を深めています。うれしいことに父兄とともに参加される小中学生も増えており、旧車ファンの底上げにつながっていると実感します。全日本ダットサン会、そして私の使命は「1台でも多くダットサンを動態保存する」こと。ただ展示するだけでなく、動けるクルマを増やし、後世に残していきたい。クルマとはエンジンが動き、その音や振動を感じるだけでも人を感動させるものです。ひとつの時代を担ったダットサンを、今後は本部棟で 工学を学ぶ学生の皆さんに見ていただき、 貴重な機械遺産を感じていただければ幸いです。
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佐々木 徳治郎さん
機械工学科
1965 年卒業
全日本ダットサン会会長
機械工学科
1965 年卒業
全日本ダットサン会会長
(広報誌「芝浦」2022年春号掲載)
お問い合わせ
芝浦工業大学 企画広報課
〒135-8548 東京都江東区豊洲3-7-5(豊洲キャンパス本部棟2階)
TEL:03-5859-7070 / FAX:03-5859-7071
E-mail:koho@ow.shibaura-it.ac.jp