しばうら人 大川 湧子さん(コンビ株式会社)

2023/02/25
  • しばうら人

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「ママ」の感性を活かして、育児に取り組む人を支える
「もう一つの手」を目指す

ベビーカーやチャイルドシートなどを開発?販売する「コンビ株式会社」で、産休?育休を経て仕事に奮闘する大川湧子さん。
「単なる人助けで終わるのではなく、子育てがわくわくして、楽しいと思えるようなお手伝いがしたい」という大川さんの、 学生時代から現在までの軌跡を辿った。
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大川 湧子さん
コンビ株式会社
RD-JPN 第2技術G 

2013年3月
生命科学科生命医工学コース卒業

チャイルドシートの技術職で企画構想から試験までを担う

コンビ株式会社は、ベビーカーや チャイルドシートなどのベビー用品を開発?販売している会社だ。大川さんはその中でチャイルドシートの技術職として、企画構想、試作品の試験、量産までの過程に携わっている。

「フルモデルチェンジの設計を初めて担った時は大変だった。それまでは既存のチャイルドシートに幌を付けるなど比較的単純な設計だったが、フルモデルチェンジは最初の構想段階から担当する。ひとつの製品に3~4年の期間を費やし、大掛かりな仕事だった」と振り返る。  

それでも、頭の中で練った構想を実際に組み立て、それが機能した瞬間は強い達成感を感じるという。「これこそ、ものづくりの醍醐味」と語った。
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産休?育休前に担当した 「ジョイトリップ アドバンス」

「君たちは何にでもなれる」 という教授の言葉を胸に就職

大川さんは小学生の時に義肢、義足製作のドキュメンタリー番組を観たことがきっかけで、医療や福祉に関心を持った。大学受験の際は、大学から工学を学び、ものづくりに携わることが可能であったため、芝浦工業大学を志望。老化に伴う血管収縮率の変化について研究をする一方で、大学4年間を通じて小学生向け理科の実験教室のアルバイトも行った。合宿なども引率し、海や山での鉱物採集や、カエルや魚の解剖を行った。子どもに関わる仕事が選択肢にあがったのもこの経験からだ。

就職活動の時期が近づいた頃、大学の教授に「君たちは何にでもなれる。医療?福祉に関わらず、工学の知識を使ってどの分野でも就職先に選びなさい」と説かれ、「私は何にでもなれるんだ」とはっとした。実際に就職活動では自動車から文具、福祉系までさまざまな業界を志望した。コンビ株式会社入社の決め手は、『育児をする人を支えるもう一つの手』という企業理念に共感したためだ。「もともと人助けがしたかったが、それだけではなく、その先のワクワク感や笑顔につなげられる点に惹かれた」という。

入社後、芝浦工業大学での学びは特に材料力学や図面、試験のデータ表の作成などで役立ったという。
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業務中の大川さん

「ママ」と仕事の両立、 そして意識の改革へ

大川さんは、約2年前に女の子を出産。現在は産休?育休を経て復帰した女性社員のひとりだ。

新入社員の頃は男性に負けない気持ちで働こうと意気込み、上司から褒められても「男性社員と同じ仕事をしただけなのに」と感じることもあった。『ママ』になった今は少し意識が変わり、女性としての発想や着眼点を大切にするようになった。例えば操作性に関しても、「女性でも無理なく使える範囲内か」など、感性を活かして提案ができる。「育休、産休を経て、一番大事なことは『常に他の人と仕事を共有できる状態』を心がけることだと学んだ。現在は時短勤務なので以前と同じ作業時間は確保できておらず、仕事と育児の両立に難しさを感じる時もあるが、経験として吸収し、たくましく成長していきたい」と語る。
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企画構想から携わった「THE S」


学生へのメッセージ
「面白そう!」を信じて進んでほしい

「私が学生時代に言われたとおり、 皆さんは『何にでもなれる』と思う。 だからこそ、自分の興味関心に素直でいてほしい」と大川さんは話す。どんな進路を選んでも、自分が面白い! と感じることであれば、一生懸命頑張ることができる。また、若いうちであれば会社もゼロから教えてくれる。

大川さんには大事にしている思い出がある。入社2年目の時に、安価なチャイルドシートに日除けの幌を付ける業務を担当した。それまで幌は高 価な製品にしか付けていなかった。ある日、子育て中の友人にその製品の話をしたところ、「今まで子どもに幌付きのチャイルドシートを買ってあげることができなかったが、リーズナブルな価格で手に入る製品を作ってくれ てとても嬉しい。ありがとう」と非常に喜んでくれた。「その製品は大きな売り上げを出したわけではなかったけ れど、こんなに喜んでくれる人が実際 にいるんだと感じ、私の方が心から感謝したい気持ちになった。自分自身や周囲の人がユーザーになれることがこの仕事の大きなやりがい。人の助けになれる仕事をしていることを、誇りに思っている」と話す。

今の目標は、育児の経験を仕事につなげ、技術者としてすべてのプロセスに対応できるようになること。「設計なども行い、技術者としてプロフェッショナルになることが目標。男性にも負けない気持ちは忘れずに、女性ならでは、育児をする人ならではの感性を活かしたい」という大川さんは、 きっとこれからも「何にでもなれる」 を体現していくに違いない。

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幌を付けた思い出の製品「マルゴット」「クルムーヴ」
(広報誌「芝浦」2023年冬号掲載)