中川雅史教授が応用測量論文集 第35巻 日本測量協会にて論文奨励賞を受賞

2024/08/05
  • 工学部
  • 社会基盤学専攻

受賞者
中川 雅史 教授(工学部)

共同研究者:
木邨 直人さん(社会基盤学専攻卒業生)
小森 健史さん(東京海洋大学)
久保 信明 教授(東京海洋大学)
清水 悦郎 教授(東京海洋大学)

学会?大会名
応用測量論文集 第35巻 日本測量協会

賞名
論文奨励賞

発表題目
都市河川マッピングのためのGNSS/LiDAR SLAMを用いたストリーミング点群セグメンテーション

nakagawa
 
次世代の都市交通インフラや、河川周辺構造物の維持管理の高度化にあたって、都市河川内における自律航行型船舶の活用が求められています。これを実現するためには、都市河川内における水上移動型の3D計測技術が必須であり、GNSS測位とSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)処理が自律航行型船舶のコア技術として着目されています。SLAMは、未知環境において自己位置の特定と環境地図作成を同時に行う処理です。研究室では、都市河川での水上移動レーザー計測におけるGNSS測位とSLAM処理に関する課題整理を行っています。この課題整理の中で、GNSS測位の欠測区間となる橋梁?首都高の下部空間や、単調形状をもつ護岸付近などで、GNSS測位やSLAM処理が不安定となることを確認しています。この課題に対しては、GNSS測位とLiDARを用いたSLAMによる自己位置推定の組み合わせ(GNSS/SLAM)による屋内外シームレス測位手法が有効であることを検証しています。しかしながら、GNSS/SLAMの長距離測線?長時間計測で得た点群からの図化には、従来よりも格段に大規模な点群処理が求められる課題があります。

そこで本研究では、LiDAR SLAMで得た時系列LiDARデータ(ストリーミング点群)からの直接的な図化や、点群処理における深層学習の処理性能向上の前段処理となるストリーミング点群の簡易セグメンテーション手法に着目しました。まず、点群を画像化してセグメンテーションする方法における高速処理を実現する要素と、点群を3D空間でセグメンテーションする方法における点群の局所特徴抽出を実現する要素を組み合わせ、ストリーミング点群のセグメンテーションに適用する手法を提案しました。さらに、提案手法をLiDAR SLAM処理に織り込むことで、セグメンテーションの計算コスト改善のみならず、点群取得と同時に3Dマッピングができる可能性があることを検証しました。提案手法は、ストリーミング点群を入力データとする深層学習における処理性能向上や、アノテーションの自動ラベラーとして活用することが前提であり、これらのための要素手法となるものです。

国内の社会インフラは高度経済成長期に建設されたものが多く、高齢化?老朽化している土木構造物の割合が急増していることが社会的課題です。また、災害が多いことも国内の特徴であり、緊急災害観測技術の重要性は増しています。本研究に加えて、衛星観測や航空?UAV測量、地上レーザースキャニング、ウェアラブルデバイス利用などの連携による、多様な測量技術を組み合わせた手法を提案することで、上記の社会的課題を解決することに貢献します。