ポリフェノールの苦味刺激が肥満や糖尿病を予防することを発見
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ポリフェノールは植物性食品に豊富に含まれる生理活性物質で、長年にわたりその健康効果は関心を集めてきました。しかしながらポリフェノールは体内に吸収されないため、そのメカニズムは不明でした。今回の論文では、ポリフェノールが消化管全体に発現する苦味受容体に結合し、脳とコミュニケーションを取るホルモンの分泌を促し、血糖値や満腹感を調整することが示唆されました。今後、本研究の成果を用いた安全性が高い新たな肥満?糖尿病の予防?治療法の開発が期待されます。
【芝浦工業大学ニュース】ポリフェノールの苦味刺激が肥満や糖尿病を予防することを発見 (586KB)
ポイント
?ポリフェノールは植物性食品に豊富に含まれており、長年にわたりその健康効果の関心を集めてきた
?ポリフェノールは、消化管にある苦味受容体に結合し、ホルモンの分泌を促進することで、血糖値と満腹感を調整する
?今後、本研究の成果を用いた安全性が高い新たな肥満?糖尿病の予防?治療法の開発が期待される
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研究の背景
ポリフェノールは果物、野菜、ナッツ、コーヒー、お茶などの植物性食品に豊富に含まれている苦味や渋味を呈する生物活性化合物で、その健康効果は、我が国においてトクホや機能性表示食品を通じて普及しています。摂取したポリフェノールは、吸収性が低いためほとんど糞便中に排出されます。一方近年、ヒトを含む哺乳類において、苦味受容体は口腔内だけでなく消化管にも発現することが発見されました。消化管の苦味受容体の活性化は、耐糖能や食欲を調整する消化管ホルモンの分泌を調整する可能性が示唆されています。しかしながら、ポリフェノールは8,000種類以上が確認されており、加えてヒトでは25種類の苦味受容体が存在するため、それらの相互作用と健康効果に至るメカニズムは不明であり、このギャップを埋める知見が求められていました。
研究の概要
今後の展望
研究助成
本研究の一部は、JSPS科研費23H02166の助成を受けたものです。
論文情報
著者 :
芝浦工業大学 システム理工学部 生命科学科 教授 越阪部 奈緒美
高崎健康福祉大学 健康福祉学部 健康栄養学科 准教授 應本 真
芝浦工業大学 大学院理工学研究科 修士1年 清水 崇文
芝浦工業大学 大学院理工学研究科 修士2年 飯田 直樹
徳島大学 大学院医歯薬学研究部 助教 伏見 太希
芝浦工業大学 SIT総研 特任研究員 藤井 靖之
東京大学大学院 農学生命科学研究科 特任教授 阿部 啓子
University of Catania Dept.Biomed.Biotech.Sci. 教授 Vittorio Calabrese
論文名:Gastrointestinal Hormone-Mediated Beneficial Bioactivities of Bitter Polyphenols
掲載誌:Food Bioscience
DOI : 10.1016/j.fbio.2024.104550