どうぞよろしくお願いします!
スプツニ子!さんに聞く 女性がつくる、未来とテクノロジー
2021.08.18
テクノロジー分野におけるジェンダーギャップと、未来と可能性が広がる実際を、アーティストのスプツニ子!さんと芝浦工業大学 学長 山田純が語ります。
アーティスト、そして東京藝術大学准教授としても活躍されているスプツニ子!さんをお迎えしてお届けする、芝浦工大 学長対談シリーズ「SIT DIALOGUE」第2弾!
その書き起こし記事をお届けします。
これからの世界を変える、エンジニアリングとサイエンスの多様性について


よろしくお願いします!

事前にお話を伺っていて、全然違う分野なので、
話がかみ合うのか実はすごく心配していました(笑)

そんなに違わないですよ、私コンピューターサイエンスと数学専攻だったので

数学って、どんなことが専攻だったんですか?

基本的にまんべんなくやったんですけど、
数学は統計数理解析、コンピューターサイエンスはCGやHCI中心です

数学と情報工学をダブルメジャーで専攻しました

それで卒業後にアートの方に進学したきっかけって、何かあったんですか?

当時、専攻のコンピュータサイエンスの学生100名中、女性の学生の人数は9名で、

少ないなと思って…

これからの世界をどんどん変えていく
エンジニアリングやサイエンスが、
そのようなジェンダーバランスの中で研究、開発がされているということは、
女性の声が反映されにくい偏りが生まれやすい状況になっているんだな
ということが身をもってわかり始めました

当時は研究者になって、その課題を解決していくルートもあるかなって思ったけど、
たとえばアーティストって社会全体に対して問題提起したりメッセージを出すっていう
役割もあるじゃないですか

私は元々クリエイティブなことも好きだったし、
もしかしてそういった形の活動もあり得るかなと思って、
アートやデザインに力を入れている
ロイヤル?カレッジ?オブ?アートというロンドンの大学院があったので、
ダメ元で受けてみようかと思って(笑)



私は理系マインドだし、テクノロジーやサイエンスも好きだったけど、
技術分野における視点の偏りや、
技術のもたらす社会的インパクトについてもっと広く議論していきたいと思って、
スペキュラティブ?デザインの勉強を始めました
テクノロジー分野におけるジェンダーギャップ
人の歴史をたどる、人工知能のバイアスへの無自覚

一番私が課題だな、これは何とかしなきゃいけないなと思うのは、
人工知能のバイアスの問題です

人工知能の性質って、
現在と過去のデータに潜んでいる社会の中の格差とか偏見やバイアスを、
そのまま正解として学んでしまうというところがあるんですよね

それがすごく顕著に出たのが、この例です


Amazonが採用のためにAIを開発しようとしていたんですが
過去のデータの中で女性をあまり採用していなかったために

AIが「女性は採用しないほうがいいのだ」という風に学んでしまって

Amazonに送られる履歴書の中に女性的な項目が入っていると、
自動的に減点をする、というふうに学習していたんですね

人の歴史をAIがそのまま辿っていっちゃうんですね…

辿ってそれを、

正解としちゃうんですね…

そうです

幸いにもAmazonは途中でその誤りに気づき、
このAIツールの開発と使用をストップしたから良かったものの、

私が懸念しているのが、気づかないままにこうした偏見を持ったAIを、
そこら中でどんどんみんな使うようになってしまう社会です

しかもAIによるバイアスは性別だけでなく、
人種や、出身地、所得など、あらゆるカテゴリで起き得ます

ちょっとゾッとしました…
ジェンダーギャップが左右する、テクノロジーの恩恵

もう一つ、私が大学時代に衝撃を受けたことなんですけど

個人差はあれど、女性って生理によっていろんなPMSや月経痛のトラブルがあるじゃないですか

それで調べてみると、PMSや生理痛に効くテクノロジーって色々あるのですが、

そのうちの一つである低用量ピルって、特に日本では「避妊」というイメージが強く、
誤解されてしまっている事が多いのですが

ピルって避妊だけでなくって生理痛をやわらげたり、
PMSのメンタルを整えるために、すごく効果がある薬なんですよ

欧米では10代女性も普通に服用しています

でも日本は世界の中でピルの承認が非常に遅く、
国連加盟国の中で一番最後だったんです

で、どれだけ遅れたかというと、
欧米では6、70年代に承認されましたが、
日本は「女性の性生活が乱れる」などの理由で、
そこから40年近く遅れた1999年にようやく承認されました

一方バイアグラが出てきたとき、EDの治療薬として有名ですけど、
当時副作用で100人以上が亡くなっていたんですが、
日本はたったの半年で世界に先駆けてスピード承認したんですね

しかも99年、ピルと同じ年に

日本でピルの承認に40年近くかかり、
リスクもあったバイアグラの承認に半年しかかからなかった事実を見ても、
政治や科学の意思決定層にどんな人がいて、
その偏りによってどういうテクノロジーが広がったり広がらないのか、
が鮮やかに見えてくるんですよね

あと、無痛分娩ってヨーロッパだともはや主流で、
フィンランドだと9割、フランスだと8割の妊婦が無痛分娩で出産しています

フランスやドイツなどヨーロッパの多くの国では無痛分娩が保険適用なんです

そして日本を見ると、無痛分娩の普及率はたったの6%なんですね

そこで日本での無痛分娩への反対意見を調べてみると、
「女性は痛んで産んでこそ母親」とか
「痛まないと愛情を子供に感じられないんだ」という意見が多く見られます

そうした文化を背景に、日本は麻酔科医の人数も少なく、無痛分娩ができる病院の数も少ないです

こうしたジェンダー観がもしかして普及率と関係があるのかなと思って、
その国のジェンダーギャップ指数と、無痛分娩の普及率をマッピングしてみたんですよ

もちろんルワンダなど、
紛争などの特殊事情でジェンダーギャップ指数が高くなっている
途上国アウトライヤーは存在するのですが、
先進国はジェンダーギャップが少ないほど、無痛分娩が普及してるんですね

この2つがかなり相関してるんです

この例でも分かると思うんですが、
女性の悩みや課題を解決するための
テクノロジーやサイエンスがどれくらい研究されて世の中で普及しているかというのは、
一部ジェンダーギャップによるものは大きいと実感しています

これって、どうやれば色んなところに響くんですかね

以前、工学部で授業をするとき、
工学を倫理など社会的な側面から考える授業をしましたね

うちでそういうのが出来ているかというと、なかなか???

前の前の学長(※ 柘植綾夫元学長)が、
「エンジニアリング向けの、工業大学としてのリベラルアーツ教育がある」と
強くおっしゃっていたのを、今思い出しました

授業の中で、という取り組みが
まだ十分にはできていないかもしれないですね

学んでほしいし教えるべきだけど、
それを教える事ができる人もそんなにいないのかもしれないし

研究者やエンジニアたちがそういう倫理のことや社会のことを知っていくのは、
これからの大切な課題だと思います

それこそ女子学生が増えれば、もっと視野が広がると思います

それがやっぱり、きっかけにもなりますよね

そうですよね
女子の大学選びの実態
未来が広がる、理系への道

女子学生が少ない理由の大きな要因の一つでもあるのが
マイノリティの辛さだと思います

「ロボットが好き」とか「数学、エンジニアリングが好き」って言うと、
どうしてもまだ、クラスメートや先生に男性ばかりだと
自分が珍しがられたり、理解されづらかったり、マイノリティになってしまう大変さを
たくさんの女性の研究者が今も抱えています

これからそのような気持ちになる女子学生や研究者が減るように
組織や環境もどんどん努力しないといけない時代だって思いますよね

意外と女子学生で、工学部に行くことを親に反対された子が存在していて

…!(苦笑しながらうなずく)

親のブロックにびっくりしました

女の子が「工学やりたい」って言うと、
「なんで」ってお父さんに言われたとか、お母さんに言われたとか

子どものおもちゃでも、男の子は電車、ロボット、レゴ、女の子にはお人形、みたいな
固定観念が2、3歳くらいから始まるじゃないですか

そうすると、文化とか価値観のフィードバックループによって、
本当だったら工学が得意であろう子、本当だったら理系に行きたい子が、
そこから遠ざけられてしまっているという現状をすごい感じますね

まさに同じことを感じたことがあって

私が学会で活動しているときに、やっぱり機械系なので女性が少ないんですね

その分野自体に女性が少ない

これじゃダメだということで、女性の委員会があって

ただその委員会にも男の人を入れないとやはり偏ってしまうということでメンバーに入れていただいていて、
中学生?高校生に「エンジニアリングおもしろいよ」っていうことを伝えに行く
「出前講師」みたいなことをやってたんですね

そのときに、色んなメーカーさんからもその委員会に入っているので、
たとえばクルマメーカーさんだったら実際にクルマを持ってきてくれたりして

それをみんなに見せて「こんなにエンジニアリングって楽しいんだよっ!」って言うと
すごい目をキラキラさせて面白がっているんですね

でも結局そうやってすごく学生さんたちは
男の子も女の子も関係なく面白がってくれているのに

やっぱりお父さんお母さんに言わせると、
「そんなところに行って将来どうするの?」っていう一言で、
大概は中学から高校に上がるときに文系の道を選んじゃうっていうようなことになる

それで「どうしよう?」っていう話になって
中学校に行ってお母さん呼んできて

お母さんに「(工学って)面白いんだよ!」って伝えたほうが早いんじゃないかって

今だってプログラマーが、エンジニアが、足りなくて足りなくて、

そうですね

プログラム書けるだけでもう引っ張りだこじゃないですか

なんか本当に理系的スキルって、身につけるだけでもの凄く将来の可能性が広がるのに

親が(子どもに)男女関係なく色んな事をさせると
変わっていくのかもしれないですね

こんなに楽しくて、こんなに可能性があるのに

「それで女の子が理系に進学して将来どうするの?」って、
いや、「将来めっちゃいいでしょ!」って感じじゃないですか(笑)

そう思うんですけどね(笑)

その壮大な誤解って、なんでそうなっちゃうんですかね?
芝浦工業大学の女子学生を増やす取り組み

本当に女子が少なくて

10年前くらいでしたかね、150人いる機械工学科に(女子が)一人、ゼロっていうときが続いて

これどうしようって思ってたんですね

それでちょうどその時にオープンキャンパスをやっていまして、
1年から4年生全体で7、8人、もうちょっといたかな?…くらいは女の子がいたのでその子たちにお願いをして、

オープンキャンパスに女子高生もいっぱい来てくれますから、
来たら「みんなでお菓子を出して、なるべく女子高生たちとコミュニケーションしてくれ、引っ張り込んで」
「先生の悪口でも何でもいいから」っていうのをしばらく続けていたら、
全学に広まりました

みんなやっぱりその危機感を持っていて、
あまりにも女性が少ないので

女性が興味を持ってくれるようなコンテンツを、
大学の教育の中にも取り入れることが必要なのかなということを思っています

男ばっかですよね

90何パーセント男の世界で疎外感を味あわせたくない

で、少なくともそんな障壁くらいは取り除いてあげたいなと思って
少しでも馴染んでもらえるような環境や、雰囲気づくりをまずやっていきたいなと思って
そんなことをやっていました

それのおかげかどうか分からないですけど、
(機械系の学科では)今、8%から9%くらいまで来ました

おお~

でもまだ100人いて10人はなかなか…届く年もありますけど

これからじゃないですか?(笑)

これからです!

大手のメーカーさんは、危機感を持っていて、
是非ぜひ女子学生さんに来てほしいっていう、

むしろ理系の女性は就職でものすごく有利ですよね、実は

もの凄く有利なんです!
特に(女子の)少ない学科ほど有利ですね、やっぱり

そうですよね

今メーカーさんたちも日本企業も、ダイバーシティーを促進しようというときに、
「女性のエンジニア、欲しい!どこにいるんだー!?」ってなってるから

世界も広がると思うんですね

しかも(男女)対等に物事をやりやすい環境は、むしろ理系のほうがあると思ったりもします

そうですよね
芝浦工業大学のこれからのビジョン
到達済みのグローバルスタンダードと、その先を目指して

今日こうやって山田先生とお話して、
トップ自らがこうやって「もっともっと女性の学生に来てほしい」って発信していることを
お伺いできてよかったです

今山田先生が考えている芝浦工業大学の未来というかビジョンみたいなものってあるんですか?

これは前の学長(村上雅人前学長 現 学事特別顧問)も、
かなりダイバーシティーについてはすごく関心が高くてですね、
特に女子学生を増やしたいという一方で、
まず先生も必要なんじゃないかっていう話もしていまして

そうですね

特にここ4、5年ですかね

可能な限り女性の先生を増やそうと、いろいろ手を打ってきました

そのおかげで、今なんとか20%に届いて、東京都の「女性活躍推進大賞」という賞をいただいたくらいです

へぇ~、素晴らしいですね

やはり女子学生が入りやすい環境の中には、女性教員がたくさんいることが

そうですね、やはりロールモデルがいたほうが嬉しいです

そこも力を入れていこうと思っています

今アメリカの理系大学でも女性教員20%って、頑張ってる方ですよ

そこはもうグローバルスタンダードを達成済みなんですね

はい!

これからそこをさらに上げていきたいと思っています!

じゃあ、20%じゃなく30%、40%目指してっていう感じですか?

女性教員は常に20%は確保したいっていうのが最低限のラインで、
やっぱり25とか30%を今後目指すべきだと思っています

やっぱりダイバーシティーが教員側にもあるって、すごい大事ですよね

そうですね

ただ、なっかなか難しいところもあるんです実際問題として

実は国立大学も女性教員がいないということに危機感を感じていまして、
女性教員向けの公募というのもすでに出てきているんですね

そうすると教員の公募をすると、やっぱり、取られてしまう

争奪戦…!

そうなると、そもそも応募者に(女性が)いないっていうような状況になってきている

でもそうやって社会が女性教員の必要性を認めてきたということ、
悪いことじゃなくていいことなんだと思っています

ですから、女性教員になる学生をもっと多く育てるというのが先なのかなと思っています

そうですよね

どの分野も争奪戦なんですね

教員もそうだし、メーカーもそうだし

いい傾向になっているんだと思います

とりあえず今どの分野もどの学科にも、必ず女性の先生がいます

素晴らしいですね

やっとここまで来た、という感じがします
ダイバーシティーに向かって

今日本当に色々お話しいただいて、すごく刺激を受けました!

まだまだ、やらなきゃいけないなと思っていること、
今後考えていかなきゃいけないことも、いくつか出てきた感じがします

山田先生がこんなにポジティブに
ダイバーシティーに向かって走っているというのが分かって、すごい嬉しいです!
お話しできて、すごい良かったです

あと、色々お勧めしたい情報とか書籍とかがあるので、
後でメモして渡したいです(笑)

もしよろしければ、大学の方にもお邪魔しますし!

是非ぜひ!

遊びに行きたいとも思っています

芸大なので、また全然違う形になってますけど(笑)

やっぱりそういう学生さんの勉強の仕方を知るっていうのも、すごく楽しみです!

デザイン分野も、もっと理系分野とコラボしたほうが面白いと思っています

今日は本当に、いいお話ができたなって思っていて、本当にありがとうございました!

こちらこそ、ありがとうございました!
今後ともまたよろしくお願いします!

よろしくお願いします!
応援してます!

ありがとうございます

もっと女子に来てほしいと思います、理系分野に

はい(笑)

女子学生、待ってます!(???)

(笑)